国王の玉座!バルセロナチェアについて伝えたい4つのこと




インテリア
バルセロナチェア BARCELOMA
ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 1929年
バルセロナチェアは、言わずと知れた近代建築の巨匠ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)と、同僚のインテリアデザイナー、リリー・ライヒ( 1885-1969)によって、1929年に開催されたバルセロナ万国博覧会のためにデザインされた椅子です。

バルセロナ万博の目玉

ミースはバルセロナ万国博覧会のドイツ・パビリオンを担当しました。この建物は展覧会のオープニングセレモニーで使われることが決まっていました。 
ドイツ館は、外壁には鉄骨とガラスがリズミカルに配され、内壁には大理石が採用された空間は、軽快さと重厚さを併せ持つ前例のないものでした。
そして硬質で静かな内部空間に、バルセロナチェアとそのオットマンがモニュメントのような存在感を放っていました。
ドイツ館のデザインはバルセロナチェアのデザインと強く響き合うものなのです。

国王の玉座

スペイン国王アルフォンソ13世夫妻をドイツ館に迎えるためにつくられた椅子でした。シンプルにして気品がみなぎる、国王のための玉座でした。
こな時のバルセロナチェアですが、現在よく知られたカラーではありません。本来は白だったのです。黒の牛革が一般化するのはのちのことです。
低めで幅が広い座面、リクライニングしておひ、一見イージーチェアー?とも思えますが、威厳さや気品さ、そして高級感を持ちあわせています。
クローム仕上げの輝くフレームと象牙色のレザーの張り地の組み合わせが成せる技でしょう。
古代ローマに置いて権力の象徴であった高位高官の椅子から着想を得た、ハサミの両刃ようなスチールの脚が印象的です。クラシックが持つ荘厳さはそのままに、モダンに昇華させていると言えるでしょう。
ミースと言えば、「ゴッド・イズ・イン・ザ・ディテール 神は細部に宿る」「レス・イズ・モア 無駄をそぎ落としたデザインは、より豊かなデザインである」といった格言が有名ですが、バルセロナチェアは、まさにそれらを具現化した椅子と言えるでしょう。
 
 

ノル社による復活

当時、その他の多くのモダニストのデザイナーたちが、大量生産に適した椅子を作り出そうとしていました。
しかしミースはバルセロナチェアでハイエンドのマーケットを目指していました。
バルセロナ万博の7ヶ月の会期を終え、バルセロナチェアはパビリオンとともに一度姿を消しました。
それを復活させたのは、アメリカのノル社(Knoll、ノール社とも)です。
ノル社は、1948年ごろから研究開発に取り掛かり、ミースの要望に高い技術力によって応え、1953年から製造・販売を開始しました(この時点でミースは、この椅子の権利をノル社に譲っています)。
 
こうしてバルセロナチェアは、ようやく商業的に量産されるようになりました。それ以来今日までアメリカでバルセロナチェアが製造されています。

聖地巡礼

もしも本物のバルセロナの、象牙色の国王の玉座が見たいなら、実はできます。
1980年代にドイツパビリオンが19再建されているので、バルセロナまで巡礼の旅に出かけるとよいでしょう。
 
以上、「バルセロナチェアについて伝えたい4つのこと」でした。
参考:『世界の名作椅子ベスト50』エクスナレッジ、『ストーリーのある50の名作椅子案内』スペースシャワーネットワーク
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