監督としてのジダン 戦術は?ゲームモデルは?レアル・マドリードならではの課題も




サッカー

リーガ開幕前、久保建英が加入し、個人的にはあまり好きではなかったレアルマドリードに目が向きつつあります。。そこで、今まであまり興味を持ってこなかった「監督」としてのジネディーヌ・ジダンについて調べてまとめてみました。

レアル・マドリードというクラブ

周知の通り、レアルマドリードはクラブ志向としてスター選手を買い集め「銀河系」軍団を組織しようとします。

選手の補強は、基本的にフロレンティーノ・ペレス会長の独断で行われるため、現場の要望が聞き入れる事は珍しいようです。選手の起用も然りで、ペレス会長の贔屓のスター選手は先発固定はもちろんのこと、配置するポジションまで指定されるというような話もあります。

一方で、選手たちの発言力も強いため、嫌われてしまうと誰も言うことを聞いてくれなくなるようです。エゴが強く、先発から外されとすぐに不満を口にして議論を巻き起こす選手も多いのです。


レアルの監督の役割は、それら世界最高のタレント軍団において、選手の、システムの、ポジションの理想的な組み合わせを考えることにあります。

自分の戦術にこだわらず、システムにこだわらず、与えられたスター選手をうまく生かしながらチーム作りをしなければならなりません。そういった柔軟性が、レアル・マドリードと言う世界最高のビッククラブで成功する監督の秘訣なのでしょう。


もちろんジダンもかつて自らが選手としてそのタレントの1人でありました。そして今は監督として世界最高のスター選手たちをまとめなければならないという課題と向き合っています。

アンチェロッティの影

ジダンは、2013-2014年のレアルでカルロ・アンチェロッティ監督の下、アシスタントコーチを務めました。現在の監督としてのジダンにアンチェロッティの影響は大きいと言われています。
アンチェロッティとはどのような監督なのか?あらためて確認しておきましょう。


一言でいうと、選手ありきの調整型のリーダーです。戦術の独創性を薄く、大変な才能をもった選手の使い方が上手く、スターぞろいの大勢力のチームをまかせれば、最適なバランスを見つけ、確実に結果を出します。個を活かしつつ、組織を極め、完璧なバランスを生み出す監督と評してもよいでしょう。

アンチェロッティには次のような言葉があります。

「自分のやり方を押し付けない。選手には今やっていることの意味を理解してもらいたい」

「選手より重要なシステムは無い。会長より重要なシステムもない」

「勝者のフォーメーションというのは存在しない。4-4-2で戦うことも、4-3-1-2で戦うこともできる。大事なのは選手の適性を見て、チームを正しい形にすることなんだ」

温厚な紳士的な性格で、スター選手を尊重し、会長の意向にも逆らわない。選手がフロントからの様々な無理難題を処理してチームを勝利に導く手腕は見事で、バランス型の指揮官の最高峰と言ってよいでしょう。

レアル・マドリードでは、2013-2014シーズン、C.ロナウドとベイル、2人の個性を生かすウイング型システムは印象的でした。

監督ジダン

ジダンは、レアル・マドリードという特異なチームにおいて、アンチェロッティと同じような役割を演じていると思います。

「世界最高のサッカー選手を11人集めても、強い人ができるわけではない。そこに調和がなければね。」

選手の能力を発揮させることを第一としながらチーム作りをしているのです。


すでに述べたようにレアルマドリードというチームの構成は、スター選手のコレクションというようなものに近く、攻撃の大物選手ばかり獲得する傾向があります。歴代の監督は常に攻守のバランスをとることに苦心してきました。ジダンも例外ではありません。

バランスと、その前提としての守備の構築が、レアルマドリードの監督としての大きな課題なのでしょう。

2016-2017シーズンは、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウド)を擁してリーが優勝とチャンピオンズリーグ連覇をしました。カゼミーロをアンカーに置いて中盤とビルドアップを安定させたことが、この偉業の重要なポイントだったのではないでしょうか。

また人間関係においても、アンチェロッティと同様に、誰に対しても角が立たない絶妙な立ち位置を見いだすバランス感覚にたけています。そしてスターばかりのレアルの選手であっても、現役時代のジダンは憧れの存在であり、チームの統率力に大きくて寄与していることは言うまでもありません。

「あのジタンが言うのであれば…」というように選手たちに納得させてしまう!選手時代の栄光が唯一無二の指導力の源泉なのでしょう。

戦術というかゲームモデルは、その時々で変わります。一概にポゼッション重視とは言えません。相手を自陣に引き込んで話すカウンターアタックに繰り出すこともあります。むしろ敵の弱点を見抜き、布陣や攻め方を柔軟に変えていくイメージがあります。1つのかたちでゴリ押ししたりはしません。

さて、2016年に監督に就任した際、つまり第一次ジダン政権では、史上初となるチャンピオンズリーグ3連覇の偉業を成し遂げました。現在そしてこれからの第二次ジダン政権はどのようなサッカーを見せてくれるのでしょうか、とっても楽しみです。

以上、「監督としてのジダンは?レアル・マドリードならではの課題」でした。

エデン・アザールの証言【2020.1.16追記】

2019-2020シーズンに加入したエデン・アザールは、ジダン監督が彼の「アイドル」だったことを明らかにしています。そのうえで、試合前の監督ジダンについて次のように述べています。

「ジダンはあまり多くを語らない監督だ。とにかくシンプルに振る舞っている印象だね。ただ、試合前になると、選手を安心させる短い言葉をかけてくれるんだ。僕が移籍してから最初の2~3ヶ月は苦労したけど、彼のおかげで良いプレーができるようになったね。選手の気持ちを理解してくれる、素晴らしい指導者だと思うよ」(「SOCCERKING」)

参考:『UEFAチャンピオンズリーグ2018-2019最新戦術論』洋泉社MOOK、『世界のサッカー名将のイラスト戦術ガイド』エクスナレッジ、『欧州サッカー 名将の戦術事典』エクスナレッジ、『ボールは丸い。サッカーの真理がわかる名言集』内外出版社

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