ハイラインを突破し裏のスペースを活用せよ!横浜Fマリノス昨季優勝で今季さらに流行の戦術、その傾向と対策




サッカー

攻撃における縦の奥行き

GKと一対一に!

ボールポゼッションをいくら続けても、シュートを打たない限り得点が生まれません。

攻撃の最終目標がシュートを打つことにあるとすれば、攻撃の戦術における最重要テーマも、「いかにしてシュートの局面を作り出すか」以外ではあり得ません。

最もシュートを打ちやすい状況は、ゴールキーパーと11になる、というのが望み得る最良の状況でしょう。

ディフェンスの背後

では、ピッチ上でプレーするチームがその状況を実現するために、最もあり得る方法は何でしょうか?

それは、「敵のディフェンスラインの背後にボールを送り込む」ことでしょう。

攻撃側が敵DFラインの裏のスペースでボールを持った時には、かなりの確率でシュートを打てる状況になっているはずだからです。

ということは、敵のディフェンダーの最終ラインの「裏のスペース」は、攻撃における最も重要な目標地点だといってもよいでしょう。

ハイラインというトレンド

とりわけ最近はハイラインで守るチームが増えているトレンドがあります。2019年シーズンに横浜FMJリーグを制してから、2020年からその高いDFラインをとるチームが増えていくでしょう。

少なくともガンバ大阪、北海道コンサドーレ札幌、清水エスパルスなどが、この構えを見せています。

さて、敵のディフェンダーの裏を狙う戦術について、イタリアで使われているのが、「深さ」や「奥行き」を表すプロフォンディタ(profondità)という言葉だそうです。英語に直すとデプス(depth)です。

サッカー用語としては、攻撃における縦の奥行き、そしてとりわけ「裏のスペース」そのものを指して使われます。

現代サッカーの最重要ポイント

事実、この「裏のスペース」をめぐる攻防は、サッカーの戦術においてきわめて重要な位置を占めています。

攻撃側からすれば、ここでボールを持つことができれば、シュートを打つ状況に直結します。

このスペースを狙う動きを見せることで、敵DFラインを押し下げて、その手前にスペースを作り出すこともできるからです。

【攻撃】裏を狙う動きとは?その方法

「裏のスペース」にボールを送り込む方法は2通りに分類できます。

⑴スルーパス/ロングパス

ひとつは、オフ·ザ·ボールでラインの裏を狙う動きに連動したパス(ロングパス、スルーパス)です。

さらにこの「裏を狙う動き」は3つに分けられます。

①まず、ゴールに向かって縦に、あるいは斜めに走り込む動き。

ゴールに向かう動きの主役は、ほとんどの場合FW、あるいはトップ下です。

この動きは、「裏」でボールを受けて直接シュートに持ち込むことを想定したものです。

しかし同時に、敵のDFラインを押し下げることによって、敵2ライン(中盤とDF)の間隔を引き延ばし、その間にスペースを作り出すという狙いもあります。

つまり、敵のコンパクトな守備陣形を縦方向に間延びさせる手段としても機能するということです。

これの典型的な効果を一例あげましょう。FWが一旦「裏」を狙う動きを見せてDFを押し下げてから、素早く踵(きびす)を返しDFラインの手前に戻ってポストプレーを行い、その落としを受けたMFやトップ下が、改めて裏のスペースにスルーパスを出すようなケース。

この場合、2度目に「裏」に飛び出すのは、2列目から走り込んだMFやトップ下ということになります。

2列目からの走り込みは、オフサイドトラップを多用するDFラインへの対抗策としても使われます。

FWが「裏」に走り込んだ時に、それを 流して、オフサイドポジションに追い込む守備戦術を採用するDFラインに対しては、タイミングをずらして2列目からMFやトップ下が走り込み、それに合わせてスルーパスを出すことで、裏のスペースを陥れることが可能になるからです。

②次に、ゴールから遠ざかる形で外に向かって斜めに走り込む動き。

この動き(ゴールから遠ざかる動き)の主役もフォワードです。

この動きは主に、敵DFライン(特にCB)の間隔を広げて、その間にギャップを作り出すために使われます。

つまり、敵のコンパクトな守備陣形を横方向に広げるための手段というわけです。

それによって生じたギャップは、ミドルシュート、あるいは2列目からの走り込みによって活かすことになります。

③そして、タッチライン際をコーナーフラッグに向かって縦に走り込む動き。

この動きは、タッチライン際でプレーするMF、あるいはSBが主役である。これは、敵サイドバックの裏のスペースを衝いてそこにボールをもらい、そこから中央にクロスを折り返すことを狙った動きです。

DFラインからのロングパスやサイドチェンジのパスと連動して行われることが多いです。

⑵コンビネーション

もうひとつは、11のドリブルやワン ツーなどのコンビネーションを使って「裏」に抜け出す、いわゆる突破です。

「裏」を狙うオフ·ザ·ボールの動きが効果的なものになるかどうかは、パスの出し手と受け手のシンクロニズムにかかっている。受け手の動き出しが早過ぎればオフサイドになることは避けられないし、逆に遅ければDFに読まれてパスカットを許してしまうことになります。

両者のタイミングを合わせるためには、毎日のトレーニングの中でこのプレーを想定した戦術練習を繰り返して、動きをシンクロさせることが不可欠になる。

パスの出し手には、ボールを受ける前にすでに前線の状況を的確に読み取り、通常はツータッチ、時にはダイレクトで適切な場所にパスを送り込むことが求められるし、受け手は、出し手のリズムに合わせて正しいタイミングでスタートを切ることが必要です。

コンビネーションによる「裏」を狙う動きは、出し手がボールを止めて蹴る(あるいは止めずにダイレクトで蹴る)タイミングと、受け手の動き出しのタイミングがぴったりと合わない限り、決して成功しないのです。

【守備】裏を取られない守り方

一方、守備側に立場を変えて見れば、ここまでの議論とはまったく逆に、いかにして相手に「裏」を取られないか、背後のスペースを狙う動きを無力化するかが、す べてのDFラインにとって重要です。

ゾーンディフェンスを採用するすべてのDFラインに共通する基本的な振る舞いは、敵のボールホルダーに味方のプレッシャーがかかっており前方にパスが出せない時にはラインを高く保って陣形をコンパクトに保ち、中盤との間隔を狭めこと。

プレッシャーがかかっていない時には、敵FWの「裏」を狙う動きを先取りしてリトリート(後退)し、最も危険な裏のスペースへのパスを消す、というもの。

したがって、状況に合わせて常にラインを上下動させ、的確な高さにコントロールすることが重要になります。

これは言い換えれば、相手の次のプレーを読みそれに先んじて動くということです。

参考:『アンチェロッティの戦術ノート』河出書房新社など

タイトルとURLをコピーしました