現ナポリ監督のアンチェロッティが、かつて著書で「ポジティブ・トランジション」について説明していたので、それを参考にポジティブ・トランジションにおいて最も重要なことなどをまとめておきます。
意味
ポジティブ・トランジションとは、つまり「守」から「攻」への切り替えのことです。
最も重要なこと
ポジティブ・トランジションにおいて最も重要なのは、「前方にパスを出すこと」です。
この単純明快な原則をあえて言葉にして「最も重要」とするのは、次のような理由があります。
最も極端なポジティブ・トランジションは、敵最終ラインの裏に抜け出した味方にパスを送るカウンターアタック。これが成功すると、パス1本で一気に敵のゴールに迫ることができます。
より短時間、より少ないパスの本数で敵のゴールに迫り、敵の守備陣形が整う前にフィニッシュに持ち込むというのが、サッカーのひとつの理想なのです。
後ろや横にパスを回している限り、敵にはボールの後ろで守備陣形を整える時間があります。
「前方にパスを出す」ということは、その時間を敵から奪い取ると同時に、ボールのラインよりも後ろにいる守備する選手の数を減らすことにもつながるのです。
カウンター発動のスイッチ
この「前方へのパス」は、そのパスを出発点として、センターフォワードのポストプレー、MFやSBのオフ・ザ・ボールでの走り込みといった攻撃のメカニズムが発動することにつながります。
つまり、より短時間で敵陣に選手を送り込むことができるのです。
例えば、守備の局面になると自陣のかなり深い位置に守備陣形を敷いて相手を前に引き寄せ、ボールを奪うとそこから一気にMF陣が前方のスペースに向かってスタートを切り、射程の長いカウンターアタックを仕掛けることができます。
その鍵となるのが、ただ1人前線に残ったセンターフォワードへの、つまり「前方への」パスなのです。CFへのパスをトリガー(引き金)にしたカウンターアタックが、組織的なメカニズムとしてチームに浸透していると、得点力は格段にアップします。
迅速なポジティブ・トランジションによる思い切りのいいカウンターアタックを、意識して攻撃の柱に据えたチームは、プレミアリーグを中心にいくつかありますね。
参考:『アンチェロッティの戦術ノート』河出書房新社