セブンチェア以前に〈アリンコ チェア〉あり!なぜ蟻なのか?




インテリア

基本情報

アントチェア Ant Chair
デザイン アンネ・ヤコブセン(1902-1974)
ブランド フリッツ・ハンセン
発表1952年

アンネ・ヤコブセンってどんな人?

1902年、デンマーク・コペンハーゲン生まれ。王立芸術アカデミーを卒業後、29年「未来の家」の案よりコンペティションで受賞し注目を集めました。

後世のデザイナーに多大な影響与えたヤコブセンという存在は次の言葉に集約されています。

「打ち負かすのがが困難で、ときにはプレッシャーにもなるが、デンマークのデザインを牽引してきた機関車のような存在」(キャスパー・サルト)

アンネ・ヤコブセンは、自身が設計を手がけた「SASロイヤルホテル(元ラディソンブルロイヤルホテル)」のためにデザインされたエッグチェア、スワンチェア、最大のベストセラーのセブンチェアなど、フリッツハンセンとの協働により数多くの名作を世に送り出しています。

デンマークデザインの地位を高め、後のデンマーク人デザイナーのが注目される土壌を作りました。

アリンコチェアの開発

ヤコブセンの数々の名作の原点と言えるのがアリンコチェアです。

19世紀前半のミヒャエル・ トーネットに始まり、アルヴァ・アアルトとチャールズ・イームズらが挑み続けてきた、成型合板の椅子の到達点と言える1脚です。

ヤコブセンは特にイームズを強く意識しており、イームズの「背と座は別ながらも3次元に加工された成型合板の椅子」を超える「背と座が一体のシェル型の椅子」の開発に執念を燃やしました
その構想をフリッツ・ハンセンに持ちかけますが、開発資金の問題で、製品化の採算が合わないという理由で断られてしまいます。

そこでヤコブセンは、製薬会社のノヴォ・ノルディスクから200脚(300脚とも)の注文(社員食堂用)を取り付け、ようやくフリッツハンセンの首を縦に振らしたのです。

試作においても3次元曲面に成形する際のひび割れに悩まされました。少しずつ削っては強度を確認し、そして最終的に蟻のくびれのようなフォルムにおさまったことから、アリンコチェアの愛称で呼ばれるようになったのです。

それから3年後に、アリンコチェアをベースに改良が重ねられたセブンチェアが発売されました。

フリッツ・ハンセン社との協働

1934年に始まったアンネ・ヤコブセンとフリッツ・ハンセン社のコラボレーション。両者の名前が広く知られるようになったきっかけが、1952年のアリンコチェアです。

オリジナルは3本脚ですが、日本では4本脚が主流になっています。

アリンコチェアに改良を重ね誕生したのがセブンチェアやグランプリチェアなどです。

名前の由来

当時の技術では、9枚の薄ベニアを重ねてアリンコチェアのような3次元の成形合板を作るときに、力が多くかかるところにどうしてもヒビが入ってしまいました。その部分を削っていくうちにたまたま美しい形が生まれてきました。さらに表面のひびを隠すためにパテで埋め、パテが隠すために黒に塗っていました。

それを見た職人が「蟻(デンマーク語でミューレン)みたいだね」と言ったところからアントチェアと言う名前が生まれたと言われています

参考:『ストーリーのある50の名作椅子案内』スペースシャワーネットワーク、『名作家具のヒミツ』エクスナレッジ、『美しい椅子2』枻文庫、『この椅子が1番! 』誠文堂新光社

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