基本情報
デザイン ジャン・プルーヴェ
ブランド ヴィトラ
発表 1934年
ヴィンテージ市場での爆発的な人気
1990年代後半、ミッドセンチュリーを代表するアメリカのチャールズ& レイ・イームズをきっかけに、日本でもデザイナーズチェアが注目され始めました。
イームズのブームが一段落し、次に目を向けられたのが、イームズと同時期に活躍した北欧のデザイナーやフランスのジャン・プルーヴェでした。
彼の椅子は、1990年代後半からすでにヴィンテージ市場で爆発的に評価が高まっており、2002年にヴィトラから復刻されました。
プレーヴェ(1901-1984)ってどんな人?
プルーヴェの父は、アールヌーボーのナンシー派の指導者でした。
プレーヴェは幼い頃から美しい工芸品に囲まれた環境で暮らし、16歳の時、父の知人の金属工芸家エミール・ロベールのアトリエで働き始めました。
厳しい修業を通し、鉄を熟知するにつれて「最小限の素材に、最小限の手仕事を加えて、最大限の機能を与える」という自身のスタイルを確立します。
1923年に独立してからも、プルーヴェのインスピレーションの源はいつも工房にあり、製図よりも前に素材の質感や重量感を大切に、手を動かしながらデザインするというスタンスは変わりませんでした。
プルーヴェの才能は20世紀の建築の巨匠、ル・コルビジェにも認められていたほどでした。柱や梁、配管等がむき出しの「ポンピドゥーセンター」(1977年竣工)のコンペの審査員を務めたり、ナンシー市の市長にもなってもいます。
傑作!スタンダードチェア
プレーヴェの頑固な思想を端的に示しているのが、スタンダードチェアを始め、プルーヴェの家具に見られる三角形の意匠です。
プルーヴェは機能を保ちながら、いかに細く、軽くできるか、絶妙なバランスにこだわりました。
人が座った時に、上方からかかる力を吸収するために座面との接合部が太く、後方にかかる力を吸収するために前後に幅を持たせ左右を細くすることで、後ろ足は三角形のフラットバーとなりました。
素材、構造の探求は、最初に作品が完成した34年以降も続きました。木やアルミといった素材を用い、分解できるバージョンを開発など、工房に閉じこもっては実験を繰り返しました。
後ろ姿の構造美
スタンダードチェアの美しさはなんといっても後ろ姿でしょう。プルーヴェは鉄を知り尽くした職人でもありました。鉄の支持構造を素直に見せた後ろ姿には、理にかなった構造が醸し出す独特の美しさがあります。
プレーヴェでは構造に命をかけたデザイナーです。家具も、建具も、建築も彼が手がけた多くはオリジナリティーあふれる構造美を備えています。
この後ろ脚は、鉄板を折り曲げて高い剛性を実現しました。座面と接する部分の幅を広くして強度を増し、上下は絞って引き締まった三角形を作っていますこのような独自の構造はプレーヴェ自身のアトリエで数々の試行錯誤を経て完成されていったのです。
参考:『ストーリーのある50の名作椅子案内』スペースシャワーネットワーク、『名作椅子と暮らす。』マガジンハウス