渡辺篤史の建もの探訪でよく見るあの椅子2 Yチェア



椅子の中の椅子世界で最も売れた椅子…これほど有名な椅子はないだろう。ハンス J.ウェグナーが1949年(1950年?)に手がけたCH24、通称Yチェア。現在まで全世界で70万脚以上売れたとか…。「Y」は背もたれのデザインにちなんでいる。

デンマークでも日本と同じく「Y chair」(デンマーク語読みだと「イーストールン」)と呼ばれているが、アメリカではウィッシュボーンチェア Wishbone=鳥の胸の叉骨(さこつ)Char と呼ばれています。世界中で販売されているが、特に日本で人気が高い。インテリアコーディネーターや建築家の影響が大きいようだ。

デザインについて。後脚のフォルムも魅力的だが、なんと言っても丸棒を曲げて形作られた笠木のラインは、美しいだけでなく、体をあずけた時の安心感という実用性も備えている。

座面は、長さ120mのペーパーコードを手作業で丁寧に巻きつけている。Yチェアのすわり心地の良さは、この座面に因る。長年の使用によって緩んでくるが、張り替えればよいだけだ。耐久性の目安は10数年と言われている。

また、一般的な無垢材のダイニングチェアが7〜8キロのところ、Yチェアの重力は4キロ程度で、取り回しが良い

ハンス J.ウェグナーは1914年デンマークのトゥナーに生まれた(-2007年)。17歳で各職人の資格を取得、生涯に500脚以上のデザインしたといわれる。その中でも最も有名な椅子が、中国の明代の椅子をリデザインしたYチェアことCH24である。

ちなみに、Yチェアにはリプロダクト品やジェネリック商品がありません。イームズのシェルチェアは星の数ほどあるのに…。50年以上経って版権が切れているはずです。なぜなのでしょうか?それは2011年に、Yチェアの製造元の家具メーカー「カール・ハンセン&サン」(デンマーク)の日本法人「カール・ハンセン&サン ジャパン」の立体商標の登録が認められているからです。これによって日本では模倣品の製造販売ができなくなりました。確かなブランド力がより強化されたと言えるでしょう。

さて、そんな椅子の王様にも短所はあります。例えば、前脚の上部が出っ張っているので、太ももの裏に当たることがあります。またダイニングチェアとして使用では、食事中にアームが腕や肘を動かす際に邪魔になります。

さらに身長が低いあるいは小柄な人には座面が高く、足がしっかり付きません。日本サイズとして座面がやや低い(つまり脚を短くカットした)Yチェアが販売されていましたが、2018年に入る頃には無くなりました。家具屋に頼んで切ってもらうしかありません。

もともとデンマーク人と日本人との体格差もありますが、生活様式の違いも座面の高さには影響を与えています。欧米人は室内でも靴を履いて生活しますが、日本人は、履いてもスリッパやルームシューズです。実はYチェアは和室にもすごくマッチしますが、やはり屋内で靴を履かない文化には座面の高さは必要がありませんからね。



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