徹底解説!楊端和(ようたんわ) 映画『キングダム』で長澤まさみが演じた美しき山の王 実在との比較!




キングダム

漫画のキャラを復習

来歴

数百年ぶりに山界を統治した王無数の山民族を統べる盟主。

女性ながら山界一の武力を誇り、山民族の間では「血に飢えた死王」の異名をとります。

彼女が王となって以降、山界の力は強まり、その数十万もの兵力は秦の役人の耳にも入るほど噂となっていました。

しかし、楊端和は一方で、山界の広さに限界を感じており、国境を無くそうとする政と意見が合致。政の熱い思いにも共鳴し、秦と同盟を結ぶことを決断します。

成キョウの反乱後は、北方の匈奴討伐に出陣。さらには北の大勢力との決戦を行っていました。

合従軍別働隊による秦国の危機を知り、決戦を中断して、窮地に陥った、王都・咸陽の目前の小さな城「蕞(さい)」に駆けつけ、李牧軍を急襲!合従軍を退かせました。

楊端和「黙って貴様らは敗者として、史に名を刻め

その功績をもって政は、楊端和に、大将軍に相当する大上造(だいじょうぞう)の爵位を与えました。

さらに、味方にすら存在を悟られぬまま魏の衍氏(えんし)城を強襲し陥落させ、政が語った秦の新「六大将軍」に名乗りをあげました。

性格

艶やかな美貌とは裏腹に、性格は男勝り。言動は豪快そのものです。常に直球で、誰に対してもオブラードに包んだ物言いはしません。

また、人情に厚く、一度心を許した相手に対しては、自らの命をかけてでも守る気概があり、配下からはたいへん慕われています。

『史記』の楊端和

作中で山界の王として描かれる楊端和は、史実でも政の覇業を支える将軍でした。つまり実在の人物です。

「楊端和」の『史記』での初出は、前238年です。魏の領内の衍氏という地を攻めたとあり、236年に王翦や桓騎とともに趙の鄴を攻めおとしたりするなどの活躍を見せています。

それからしばらく消息が途切れるが、229年からはじまる趙攻略戦では、王翦を主将、桓騎を副将とする征討軍に末将として従い、領内に深く侵攻。趙の都・邯鄲を包囲しています

河内とは現在の河南省 北部にあたり、魏から秦の支配に移ってからまだ日の浅いころでした。邯鄲は趙の都で、河内の北辺からすぐ北に位置していました。

そして228年「王翦と羌瘣が趙を平定し、趙王を捕らえた」という記述があります。

しかし、このように楊端和については、その名があるのみで、その経歴については『史記』には一切記されていません。

検証!漫画の「楊端和」

漫画『キングダム』では、楊端和を犬戎(けんじゅう)の後裔としていますが、「戎」とは中華世界から見て西方に居住する異民族の総称です。

西周の滅亡を招いた西戎・犬戎はともに秦の都から見て西方に居住した異民族であるから、楊端和がその後裔というのも、ありえない設定ではありません。

また、「山の王」として登場しますが、山岳民族の出身者であった可能性もなくはないと言われています。

兵馬俑(へいばよう)の顔つきを見てもわかるように、秦の軍団はさまざまな民族により構成されていたからです。

原泰久先生はお爺ちゃんにする予定だったが…

『キングダム』では、楊端和は、穆公と結んでいた野人(山の民と呼ばれる)の王として初登場します。そして女将軍として秦王政の強力な助っ人として活躍します。

ここまで述べてきたように、楊端和は実在の秦の将軍です。

それを原泰久先生が、野人の女将軍という設定にしました。

原泰久先生の公式コメント

最初の構想では楊端和はお爺さんでした。その孫娘に今の楊端和がいるはず。だったのですが、いざ連載が始まると一『その二段構えの構図、必要か?』と考え、孫娘がそのまま楊端和になりました。

後々重要になる「楊端和」の役に、羌塊とはタイプの違う女性キャラを入れたかったというのもあります。

蕞の援軍に現れるというのは、特に史実に基づいたことではないんです。ただ、あの場に駆けつけてくるという構想だけは最初からあったので、それまでいっさい気配を感じさせないように、山の民のことは描かないようにしていました。

楊端和を描ときは中一の美女くらいの意気込みで描くのでけっこう疲れます()。キャラの掘り下げはこれからなので、自分でも楽しみです。

(ヤングジャンプコミックス『キングダム公式ガイドブック覇道列紀』)

「山の民」とは?伝説と実態

山の民=野人

「山の民」とは、「野人」のことです「野人」という言葉がみられるのは周

時代からです。中国全土に封じられた諸侯により、都市国家としての「国」が林立するようになった時代です。

この頃、防備が整った国の中に住んでいた人を「国人」といい、身分が低かったり、都市国家近くの集落に居住したりしていた人は「平民」と呼ばれました。

国と国の間に広がっていたのが「野」で、そこは農地や雑木が鬱蒼と生い茂る辺境地帯です。この野でに住み、国に奴隷として使役されてたのが「野人」です。

野人の起源

「野人」は、征服された土着民や殷(いん)の遺民とされています。

彼らは農業労働に従事させられ、支配階級に上前をはねられていました。また、野人は教育も受けられない被差別層だったとみられます。

戦国時代の野人

「国人」と「野人」の関係に変化が起こったのは諸国間の戦争が激しくなった春秋中期から戦国時代です。

歩兵の数が重視されるようになったので、国人の徴兵だけでは足りず、野人らも徴兵されるようになりました。

野人の軍は、楊端和が率いる山の民がそうだったように、勇猛果敢で、諸侯に重宝されました。

参考:ヤングジャンプコミックス『キングダム公式ガイドブック覇道列紀』、ヤングジャンプコミックス『キングダム公式ガイドブック英傑列紀』、双葉社スーパームック「春秋戦国の英傑たち」、サンエイムック「史実で読み解く『キングダム』の英雄たち」、別冊宝島2600号『春秋戦国時代合戦読本』

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