史実では謎の人物…
慶舎が趙の武将であることは確かです。『史記』では「趙世家」に2回登場するのみですが、実在の武将です。
趙の孝成王、その子・悼襄王(とうじょうおう)の二代にわたって趙に仕えています。
1回目は、前256年、楽乗(がくじょう)とともに秦の信梁(しんりょう)の軍を撃破したとする記事です。
2回目は、前240年、将軍として、東陽にあって黄河の南岸の兵を率いて黄河の梁(りょう)を守っていたとする記事です。
梁とは水橋を表わす言葉なので、ここでは木造の仮設の橋を指すものと考えられます。侵攻に備える重要な任務を課せられていたと推測できます。
漫画『キングダム』の慶舎
李牧も恐れた実力
李牧との模擬選では何度か勝つほどの実力者で、李牧からも恐れられています。
常に冷静に戦場を見つめ、戦局のカギとなる点を探すことから「沈黙の狩人」と呼ばれています。
異名の由来
「沈黙の狩人」という異名を持つ将軍・慶舎は、李牧が絶大な信頼を置いています。
「沈黙の狩人」と言われるのは、鋭い観察眼を持っており、罠を仕掛け敵がかかるのを待つことからです。
守勢からの反撃を得意としており、李牧に、その実力は「本能型」の将軍の中でも一番恐ろしいと言わしめたほどです。
本能型とは?
「本能型」の意味
慶舎は、「本能型」の武将として、趙軍の総指揮を務めた合従軍戦では、同じく本能型の武将・麃公(ひょうこう)の動きを封じています。
「本能型」の慶舎は、戦場の機徴をはじめ、人の本質を“匂い”で嗅ぎ分けます。
慶舎「お前は私と同じ〝匂い〟がする」
あらゆる状況から戦局を敏感に感じ取る麃公に対し、何も感じ取らせないよう、味方の李白に計略を用いることを禁じました。
そして危機を察知できない麃公軍の後列を襲撃し、麃公の動きを封じました。これらの策は軍の配備時からすで仕掛けられていたのです。
本能型の俊英・慶舎の面目躍如の場面でした。
信に敗れる…
黒羊丘の戦いには趙軍総大将として臨み、桓騎が放った雷土(らいど)とゼノウ軍に対し、精鋭部隊を率い自ら出撃。
まるで見えぬ糸で巣を張り、獲物を絡め取る蜘蛛の如く敵軍の頭と後続を分断、孤立させ包囲し敵を追い込みます。
しかし、最後は信との一騎討ちの末に敗れ、死を迎えました。
検証!「慶舎」
実際に本能型とかは不明…
漫画『キングダム』では慶舎を本能型の軍師の極みとし、「沈黙の狩人」の異名を与え、対秦合縦軍の総指揮を執ったとしています。
しかし、もちろん、それを裏付ける史料は何もありません。
軍師の宿命
慶舎の名は『戦国策』にも登場せず、謎多き人物であると言わざるをえません。
ただし、本当に李牧の片腕であったとすれば、史書での登場回数が少ないのも納得がいきます。軍師であればその活躍が史書に残されることは少なく、多くは、李牧のような主君の功績に帰せられるからです。
原泰久先生の公式コメント
「史実に残っている名前から引っ張ってきたキャラですね。確か、川沿いに城か何かを作ったのかな?
慶舎は合従軍で麃公と対峙したことから、流れで本能型の武将になったのですが、今の展開(※黒羊丘の戦い)では自分の首を絞めちゃってる状況です。
考えの読めない慶舎と、本性を出さない桓騎の戦いなので、なかなか噛み合わない(笑)。
ビジュアルも、その時の勢いで決めてしまった部分もあって、強いのか弱いのか見た目じゃわからなくて…。今の戦いでようやく本人にも「武」があることを描けました。」
参考:ヤングジャンプコミックス『キングダム公式ガイドブック英傑列紀』、ヤングジャンプコミックス「キングダム公式ガイドブック覇道列紀』、双葉社スーパームック『春秋戦国の英傑たち』、サンエイムック「史実で読み解く『キングダム』の英雄たち」