意外に深い思想的な背景?!「ニュータイプ」とは何者か?その能力と一年戦争における存在意義




ガンダム

「ニュータイプ」という言葉の初出

まず強調しておかなければならないのは、「ニュータイプ」は超能力者ではありません、ということです。
では何者か?端的に言うと、宇宙に進出した人類の中に誕生した、勘や洞察力に優れた者が「ニュータイプ」です。
劇中では、それまでにも「エスパー」や「新しいタイプの奴」といった言葉は出ていましたが、「ニュータイプ」という言葉自体が登場したのは、第37話にてシャアが「ガンダムのパイロットもニュータイプだとはな」と口にしたのが最初です。

「ニュータイプ」の生みの親

そもそもニュータイプという考え方は、ジオン共和国の祖、ジオン・ズム・ダイクンと、その思想であるジオニズムの支持者によって提唱されたものでした。
ダイクンによれば、人類は新しい環境に適応する力を持っており、宇宙進出時代には新たな環境に適応した新たな人類、すなわち「ニュータイプ」が現れるのではないか。
ダイクンが考えていたニュータイプの具体的な姿は、のちのアムロやララァに近いものでした。
高い洞察力と状況認識能力を持ち、円滑な意思の疎通によって物事のあるべき姿を見抜く存在。そしてその力によって醜い争いから人々を解放する、革新的な人間でした。
ただし、当初、ニュータイプはあくまで思想的なもので、具体的にニュータイプがなぜ生まれ、現実に存在するのかはだれにもわかりませんでした。
あくまで宇宙で暮らすようになった普通の人間が進化したものと描かれており、ジオン公国軍、地球連邦軍ともに、その能力を戦いの道具として利用したのです。

「ニュータイプ」の育ての毒父

さて、そのダイクンの思想を曲解するかたちで具体化したのが、ギレン・ザビです。

ギレンは「優性な人類であるスペースノイドこそニュータイプ」と表現するなど、ダイクン亡き後は、主に政治的な道具(優生思想)として利用しました。
そのため、劣性と決め付けられた地球連邦軍側では、「ニュータイプ」という言葉すら使うことを禁じられていたようです。(地球連邦軍では、レビル将軍のみがその思想に一応の理解を示していました)。

「ニュータイプ」の育ての毒母

そして戦争という環境が、優秀なパイロットというかたちで、ニュータイプの能力を発現させたのです。
ギレンの主張はあったものの、ジオン側でもニュータイプには懐疑的な者が多かったのですが、その妹のキシリア・ザビがその能力に注目したことで風向きが変わります。
キシリアは、サイド6の科学者・フラナガン博士を中心としたフラナガン機関を設立し、ニュータイプ研究をさせました。
フラナガン機関はニュータイプが発する「感応波」を確認し、ララァなどのパイロットを育成するなど、ニュータイプの実戦投入へ大きな役割を果たした存在でした。
戦場へ投入されたニュータイプのパイロットは高い洞察力と認識能力で、敵を視認することなく、動きや攻撃を察知することができました。
また人間同士の意思の疎通を円滑にする力と考えられる感応波は、後に遠隔攻撃システムであるサイコミュに利用されることとなりました。
このため、モビルスーツ戦が中心であり、パイロットの能力が重要だった一年戦争では、突出した能力を発揮しています。
ニュータイプの実戦投入により、戦闘は新たな局面を迎えます。例えば、オールレンジ攻撃です。
上下左右、そして前後から繰り出される、多方向からの銃撃。サイコミュやビットといった精神感応兵器がそれを可能にしています。ブラウ・ブロを駆るシャリア・ブルが初めてこの言葉を使いました。
発現したニュータイプの能力は、半ば夢物語と思われていたジオン・ダイクンが予言した力と寸分違わぬものでした。
だが、争いから解放される力が戦争に利用されるというのは、なんとも皮肉な話です。

シャリア・ブル

ジオン公国の木星輸送船団の指揮官。ニュータイプ能力を見出され、フラナガン機関に出向。シャアのニュータイプ部隊へ編入されました。階級は大尉。
ギレンの命令により即戦力としてキシリアのもとへ送られてシャア麾下となり、ブラウ・ブロを与えられる。
ニュータイプとは、アムロやシャアといった若者だけではなく、彼のような年長者でもなれることがここで判明しました。

ブラウ・ブロ

ジオン軍の宇宙用巨大モビルアーマー。
有線式サイコミュを初採用した機体。
ニュータイプ専用MAとして開発され、サイコミュを初めて実用化した機体。

有線式サイコミュにより、本体から分離した4基のメガ粒子砲台を遠隔コントロールし、全方位(オールレンジ)攻撃を行うことができます。
搭載するサイコミュ・システムやジェネレーターの影響もあり、ジオン系MAの中でも機体サイズは最大となりました。
ニュータイプパイロットによる単独操作が基本ですが、非ニュータイプパイロットでも砲台のコントロールは可能。しかし、砲台を操作する人員と操縦する人員が必要となるので搭乗員は増えます。
このシステムは後のMSN-8ジオングにも採用されました。
機体は3つのブロックに分離し、中央部、左右のブロックに分離することが可能。非常時の際、緊急脱出装置としても機能します。
machine data
番号 MAN-03
全高62.4m 全長 43.4m
本体重量 1,735.3t
全備重量 2,602t
装甲材質 超高張力鋼
ジェネレーター出力74,000kw
スラスター推力760,000kg
センサー有効半径156,000m
武器 有線メガ粒子砲×4
機体の上下左右に装備のメガ粒子砲台。
機体から砲塔部分を分離させ、
有線誘導によるオールレンジ攻撃が可能。
初登場となった第33話では目立った活躍のなかったブラウ・ブロ。
しかしシャリア・ブルというニュータイプのパイロットを得て、その真価を発揮します。
ララァ以上のニュータイプと期待のかかるシャリア・ブルがシャアのもとへ参じのです。
ブルはひと目見てララァの才能を高く評価したが、自分からは何を感じるかと問うシャアに対しては、若干言葉を濁します。
そして、ガンダムのパイロットがニュータイプであることを聞いたブルは、テストを兼ねてモビルアーマー、ブラウ・ブロで出撃します。

アムロの覚醒

一方、接近するブラウ・ブロを迎撃すべく、アムロはガンダムで出撃。
だが、サイコミュ兵器を搭載し、あらゆる角度からメガ粒子砲を放つブラウ・ブロにアムロは今までの敵とは違う脅威を感じます。
さらに、アムロの反応速度にガンダムの性能が追いつかなくなり、そのもどかしさに四苦八苦してしまいます。
シールドを破壊され、窮地のアムロは心を落ち着かせて目を閉じると、敵の動きを完全に予測してから敵機の側面に回り込み、ビーム・ライフルを撃ち込みます。この、ニュータイプの真価を発揮するような戦い方でブラウ・ブロを撃破しました。
ガンダムの性能に頼っていたアムロの姿はもういません。今のガンダムでは、磨かれたアムロの反応速度に逆についていけなくなっていた。
まるで個別の戦闘機のようにメガ粒子砲を操るブラウ・ブロ。縦横無尽の動きに対処するため、アムロは神経を集中させ動きを先読みしました。
ブラウ・ブロのサイコミュ兵器に、アムロのニュータイプ能力がさらに覚醒しました。
ガンダムですら感覚が鋭敏になったアムロに応えられないことが判明し、これがマグネット・コーティングというガンダムのパワーアップするきっかけになりました。

ララァ・スン

ニュータイプ研究施設フラナガン機関で育てられたニュータイプの少女。シャアに目をかけられ、恋人関係となっています。

高いニュータイプ能力を持つからこそ、敵であり、同じニュータイプであるアムロと精神的な部分でも感応してしまいました。
戦闘中、精神交感するアムロとララァ。ニュータイプは超能力者ではないが、こうした精神の対話シーンは幻想的に描かれていました。
ララァは、ニュータイプとして、サイコミュによるオールレンジ攻撃を使いこなし、艦船クラスを多数撃沈。アムロを相手に同等以上の戦いを見せたことからニュータイプのパイロットとしても高い技量を持ってていたことがわかります。ニュータイプがゆえに出会い、戦い、そして散っていくという悲劇的な運命を辿ったのです。

エルメス

ジオン軍のニュータイプ専用大型モビルアーマー。

小型無人攻撃機「ビット」を複数射出して脳波コントロールで探作し、あらゆる角度から攻撃できます。操縦と攻撃をひとりで行うため、パイロットの負担が大きい期待です。
地球連邦軍では謎の爆発により艦船が撃沈されるという事件が続発。それはテスト中のララァのエルメスによる遠距離からのビット攻撃でした。
アムロ「何か呼んでいるような気がする。何だ?何かが見えるようだ。何だ?」
machine data
型式番号 MAN-08
全高47.7m
全長85.4m
本体重量163.7t
全備重量 291.8t
装甲材質 超硬スチール合金
ジェネレーター出力14,200kW
スラスター推力645,200kg
武器 武装メガ粒子砲×2 ビット×12
以上、「意外に深い思想的な背景?!「ニュータイプ」とは何者か?その能力と一年戦争における存在意義」でした。
参考:『ガンダムの常識 一年戦争篇』双葉社、『ガンダムの常識 モビルスーツ 大事典 U.C.0079~0083編』双葉社、『完全保存版 機動戦士ガンダム大解剖』三栄書房、『別冊宝島662 僕たちの好きなガンダム』宝島社、『別冊宝島2547 僕たちの好きなガンダム Reboot』宝島社など
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